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詩劇=夢乃月愛花と美しき乙女達

その5~洋平サイド

洋平は、目が覚めると、大きなあくびをした。時計を見ると、午後12時15分を指していた。今日は、バイトの日だ。洋平は、本屋でバイトをしている。バイトをしながら、生活を送っている。昼飯を食べながら、あの少女のことを考えていた。あの少女にそろそろ会ってみたいな気がした。しかし、あの少女はきっと悲しい少女だと思った。「あの音色は、悲しい音色に俺は聴こえる」と間違えなくそう感じた。とりあえずは、俺が書いた歌詞を持って、あの少女に渡すのがいいと思った。でも、さすがに分からないけど、そうしないと、いけないと思った。そんなことを考えながら、昼飯を食べ終わり、バイトの準備を始めて外に出た。

洋平が、バイトをしている本屋は、この時計台がある、メイン通りにある、小さなお店だ。少し、アンチック風な本屋で、主に、小説、詩集、写真、辞書、絵本などが取り扱っている。この本屋では、若い人から、年配の人まで、さまざまな人が利用している。中には、結構価値の高い本もある。今日の洋平の仕事は、古本の整理だ。最近、本を売る人が多いので、すごく大変だった。ここ一日で、50冊は買取をしている。中には、売れなくて、処分してと言うお客様もいる。バックヤードで、一人で整理を始めた。まだ、新しい本は、少ない。しかし、古い本は、結構たくさんある。しばらく本の整理をしていると、一冊の絵本に目が付いた。その絵本とは・・・天使の絵本だ。表紙のタイトルを見ると・・・「天使の甘声に誘われて」というタイトルだ。洋平は、そのタイトルと表紙に興味を持ち、少し中を開けて確認してみた。この絵本は、このようなストーリだった。

「ある日、孤独な天使がいました。その天使は、いつもさみしく一人で泣いていました。友達は、誰もいません。その天使は、友達が欲しくても作れませんでした。その天使は・・・いじめられていました。いつも一人で、誰からも愛されませんでした。”このまま死んでしまおうか”とその天使は、いつしか考え始めました。そして、その天使は、一つの賭けに出ました。それは、歌を唄うことを考えました。ずっと、ずっと、その天使は歌い続けました。みんなに振り向いてくれるまで、寝ることも、食べることも惜しんで、歌い続けました。きっとそれで、みんなの願いが叶えればいいと思った。少しずつ、少しずつ・・・。そして、ある日、いつしか、みんなが、その天使の歌声に注目するようになりました。いじめていた天使達もみんなが、その想いに伝わりました。その甘声にみんなの心が伝わり、それから、その天使にも友人が出来るようになりました。」

それを読んだ洋平は、感動のあまり、泣いてしまった。洋平は、きっとあの少女もこんな絵本と同じ内容なのかなとそう思った。そして、この絵本を買うことに決めたのであった。



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